男女群島

男女群島

この前、男女群島に行った。
いやはや、恐ろしいところだ。
長崎(平戸)からイカツイ高速船(船名:ブラックヘリオス/名前からしイカツイねん)で3時間半(南西沖に200キロ)。ジェットコースターに3時間以上乗っているようなものだ。座っていると強い揺れ(ロデオ状態)であっという間にゲロゲロなので横になっているのだが、時折強い衝撃があって(宙に浮いた船が海面に叩きつけられる時の衝撃)眠るどころではない。酔い止めを飲んでいたがヤバかった・・・。
平和卓也(ひらわたくや・通称ピース/DUELのプロスタッフ・若きグレ釣りトーナメンター)のビデオ取材で行ったのだが、釣り人って恐ろしい・・・。好きこのんでこんな場所に行く人が後を絶たないとは・・。日本中で最も釣り人が多く訪れる「磯釣りの聖地」らしい。
男島女島他いくつかの大きめの島(島と言っても建造物は灯台がひとつ。岩場ばかりの島)と、無数の小島(磯)からなる群島だ。
離島の天候は本土とはまるで違う。
新大阪から新幹線で博多。博多からレンタカーで約2時間半。長崎は平戸口に渡船屋さんがあるのだが、前日の情報で午後3時には間違いなく出航できるという話があったにもかかわらず、行ってみると「時化で無理やけん、出航は明朝5時になるよ」とのこと。
「ええ〜、出てくれよ」と思う反面、「いや、危ない。出てくれるな」とも思う。
しょうがない。
渡船屋の2階で一晩過ごし、翌朝暗い中出航した。

取材が始まって半日、早速メインカメラが男女の凶暴な波に襲われる。いきなり潰れた。スタンバイ状態にはなるもののRECボタンが効かない。
しょうがなくサブカメラ(PC120/民生機)にワイヤレスをつないで取材を続行する。カメラマンのトニーさんもやりにくかったろう。小さなカメラを片手で持って、平和氏には「パパさんの撮影みたいですね」とか言われている。
初日の取材では「美味しいグレ(関東で言うメジナ。関西ではグレ、長崎ではクロと呼ばれる、磯釣りファンにとっては馴染みの深い魚だ)の食べ方」なるミニコンテンツも撮影予定だったがそれどころではない。真っ暗な中、一応グレ鍋は作ったものの、出来上がりと食事風景を撮るだけでいっぱいいっぱい・・はぁ・・。
食事の後、メインカメラをいじっているうち、リモコン操作でならRECできることが判明。なんとか使えそうだ。

晩は磯泊まり。
磯には平らな場所がない。テントも張れず、寝袋のみで寝る。
厳しい寒さだと聞いていたので、「山と渓谷」の副編集長をしている知人に相談して強力なシュラフを用意しておいた。厳冬期3000M級の雪山対応(-20℃対応)のシュラフシュラフカバーだ。これは問題なかった。ただ、顔だけが冷たい風にさらされて眠れないので、ニット帽などで顔を覆う。
トニーさんと2人で4時間ほど仮眠をとる。岩場の傾斜を少しずつずり落ちながら・・・。
この間、釣り人達は釣りを続けている。恐ろしや・・。

翌日、メインカメラの調子が徐々に怪しくなってくる。
勝手にズームが入ってしまうようになり、時折POWERボタンそのものが効かなくなる。
メインカメラとサブカメラを交互に使いながらなんとか撮影を続行。

だましだまし撮影しながら再び夜を迎えるが、2日目ともなると、着替えもせず帽子も被りっぱなしなので、加えて寒さのため皮膚が神経過敏になってきて、額や背中、体の末端がひりひりしてくる。
寝袋に体を収めても、顔の処理がうまくいかない。非常に冷たい風が吹いているので顔を隠さないと眠れないのだが、帽子を被るとひりひりし、取ると寒く、シュラフに潜り込むと逆に暑さのため顔が痛くなり、そして酸欠状態になる。どうすればいいというのか!
その間にも釣り人達は釣りを続けている・・・。恐ろしや。

今回の2日半の取材、晴れ間はほとんど無かったが、同時に雨に見舞われる事もなかった(雪にはちらほら降られたが)。雨に降られていたら泣いていただろう。せめてもの救いだ。

そんなこんなでなんとか撮影も終了することができたが、今回は天候のため、風表(かぜおもて・ここでは西側)に入る事が出来なかった。男女群島は大きなグレが釣れる事で有名だが、そんな一級ポイントは西側にある。近場での釣りと比べるとそれでも良い釣果ではあったのだが、男女群島と聞いてイメージするような獲物は上がらなかった。
色んな意味で手強かった。
この取材の内容は、2005秋にリリースするビデオ(タイトル未定)に収録する予定。

取材中、ずっと頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えていたフレーズ。
男女群島。ここは聖地ではあっても、楽園ではない。」