鳥居みゆき

鳥居みゆき

鳥居みゆきが気になるなぁ。

初めて彼女を見たのは2〜3ヶ月前か。youtubeで、単にお笑い芸人の一人として。「まさこ」ネタだったと思う。
最初は面白いとは思えなかった。が、その芸人らしからぬルックスも手伝って、何か気になる・・。
しばらく経ち、M-1の後か?サンドウィッチマンのほかのネタが見たくてネット検索をしていると、再び鳥居みゆきのサムネールを目にし、見てしまう。
「まさこ」ネタを2〜3と、エンタの神様出演の動画だったと思うが、面白い部分と面白いとは思えない部分が混交していて、やはり高い評価はできない。「ヒットエンドラ〜ン」のフレーズも好きになれない。
水着動画もあり、ニコニコでは「かわい〜い」とか「マジ美人」とかいうコメントばかりついているが「そこまでじゃねーだろ」と思ったり。

次に見たのが、カンニング竹山とのカラミがある映像(恋愛中毒)だ。これはなかなか面白い。どうも頭の回転は速いようだ。引き出しも多い。しかしその時点でも、ネット上での非常に高い人気や「天才」という評価にうなずくことはできなかった。

でもやはり気になる存在ではあったのだが、そんなときR-1グランプリに出場しているという情報を聞き、その数日後に決勝まで勝ち進んでいるということを知る。

昨日の決勝をテレビで見ることはできなかったが、なだぎ武が2連覇というニュースを目にして、どれどれとyoutubeを覗いてみた。
なだぎ武芋洗坂係長も面白い。鳥居みゆきはというと、やはりまさこネタ・妄想紙芝居ネタ。出来は悪くなかったが目新しいものではなかったので少々がっかりした。
「なんだ。オレ、鳥居に期待してたのかよ。」なんて思いつつ・・。

「ほんとはオレ、好きなんじゃないの?もっと見てみたら?鳥居みゆきを」・・・こうして鳥居みゆきのほかの動画を漁り始めた。
堕天使ネタ、巫女ネタ他、今ネット上で見れるものの大半は見たと思うが、


・・・とても良い!

そして、過去の鳥居みゆき、今の鳥居みゆき、ネタやライブのバリエーションなどから、彼女そのものが少しずつ見えてきた。
彼女はいわゆる「お笑い芸人」とは一線を画す。どうも彼女がやりたいのは単純に「笑える芸」ではないようだ。

「妄想結婚式」を見たときは不覚にも鳥肌が立った。良い。これはもう単なるお笑いではない。一人芝居のステージと言って見せられても大きな違和感はない。が、逆に芝居だとすると笑いに対する感覚が鋭角すぎる。
彼女は「言葉」を巧みに使い「言葉」で遊ぶ。このあたりは野田秀樹鴻上尚史あたりから多く使われる小劇場演劇の手法を思わせる。
そして短い舞台ながらも、きっちりとストーリーがあり、しかもひねりが効いている。少々ブラックなところも刺激的。
コアな野球ファンか野球経験者でなければ思いつかないような台詞や、時代に即したもの、実体験に基づくものなど、ネタの出所が広範囲なところもステージに深みを与えている。
そして、真打をつとめる落語家にも見せたいほどの見事な「さげ」。表現者としての非凡な才能を感じることができる。

彼女のパフォーマンスには「狂気」を思わせる側面があるが、この計算された狂気とタブーを扱う姿勢などは、少なからず鳥肌実の影響があるのだろう。
動画のどこかで「戸川純のようになりたい」と本人が発言していたが(本心か単なるネタかは定かではないが)、なるほど、そのニオイもある。

何人かの名前を挙げてみたが、彼女はそういった要素を自分のものとし、ステージ上では完全なる「鳥居みゆきワールド」を構築している。
彼女に関しては、「演技力がある」「ルックスが良い」「(言葉遊びも含めた)ネタ(というか脚本というか)が良い」「頭が良い」等々、色んな評価がある。
が、ひとつひとつをとると、どれもその分野ではもっと秀でた人がいる。
彼女が素晴らしいのは、それら全てを高い次元で持ちあわせ融合し「笑い」に昇華させ、なおかつ従来の「お笑い」とはひと味違う新しい世界を見せてくれるところだ。

・・あ、褒めすぎた。

彼女のすべての舞台がすばらしいわけではない。エンタの神様の時などは(番組制作側の意図が関わっているにせよ)全然面白くなかったし、エンタ以外でも笑えないものも多々ある。笑えなくてもいいが、楽しめないものも。
本人の状態(肉体的な要素なのか精神的な要素なのかわからないが)によってもかなりデキが変わるように思う。
妄想葬儀(東京腸捻転)では、台詞がスッと出てこないなど若干の不手際があり、それがけっこう全体の出来に影響していた(ところでこの演目は途中カットされているんだろうか?葬式の話をし始める時のきっかけがなかったが、これってフリになるべきものがあったんじゃないのかなァ。表現上マズいシーンだったのかなあ。オチがきっちり落ちてないんだが)。この演目を、カットもなく完璧に演じているステージを見てみたい。きっと非常に良いだろう。
ギャグラでの「テスト勉強」ネタは、スタジオでカットを割って撮影し、ツギハギしたものなのだろうか?流れがもうひとつ感じられない。伝わってこない。が、同じネタをやったステージライブ(東京腸捻転)はよかった。「妄想結婚式」ほどではないが高い完成度だ。観客がいたからかもしれない。

最近は、基本的にはネタをやっていない時、例えばインタビュー時なども「狂人風鳥居みゆき」を演じている彼女。
もしこのまま人気が上がっても、その芸風だけでは(レーザーラモンHGや波田陽区ほか、一発屋といわれる多くの芸人たちのように)そのうち困ることになるんじゃない?と思っていたが、彼女はそうではないことがはっきりとわかった。
今の鳥居みゆきは、彼女が演じるキャラクターのひとつでしかない。このキャラは強いインパクトもあり、世間での認知度や人気が上昇することには役立っているのだろう。
今はまだ途中。むしろ、次の段階に進んだ時に、さらに魅力的な鳥居みゆきが出現することに期待できそうだ。その場合、ひょっとしたらお笑い芸人という範疇の人物ではなくなるという可能性もあるが、それはどっちでもいい。期待したい。


それはそうと、どのステージも全て裸足なんだね。。